「普通賃貸借契約」と「定期借家契約」とは。
サブリース契約をするときには、経済的条件や物件情報にばかり目が行きがちですが、忘れてはならないのが、契約形態の確認です。
と言うのも賃貸借契約には「普通賃貸借契約」と「定期借家契約」があり、両者の違いをおさえていないと取り返しのつかない事態になりかねないのです。
そこで当記事では、「普通賃貸借契約」と「定期借家契約」の違いについて解説します。
「普通賃貸借契約」と「定期借家契約」の違い
賃貸借契約の形態には「普通賃貸借契約」と「定期借家契約」があり、契約を結ぶ前に両者の相違点を知っておくことが大切です。まずはそれぞれの特徴を大まかに解説します。
普通賃貸借契約
普通賃貸借契約とは、定められた契約期間満了と共に契約更新できる契約です。借主から契約解除の申請がなければ、更新されます。
貸主は正当事由が無い限り、借主からの更新申請を拒否することはできません。
したがって、普通借家契約においては借主の立場が強いことになります。
契約は口頭で済ませることも可能ですが、トラブル回避のためにも書面にしておくのが良いでしょう。
定期借家契約
一方の定期借家契約は、契約期間満了と共に必ず終了する契約です。
基本的に更新はなく、契約期間を終えれば借主は退去しなければなりません。ただし再契約を結び、更新することはできます。
契約は、必ず書面で行わなければなりません。
さらに契約書とは別に、更新はなく期間が満了すれば契約終了となる旨を事前に書面で伝える義務があります。
貸主がこれを怠った場合は、その契約は定期借家としての効力を失い、普通借家契約となります。(定期借家契約から普通借家契約に変更することは可能です)
定期借家制度ができた背景
定期借家契約は、平成12年より開始された「定期借家制度」に則った契約で、それまでは普通賃貸借契約しかありませんでした。
普通賃貸借契約では正当事由なしに契約更新を拒むことができないため、例えば
「将来的に建て替えを検討中のアパートの一室を貸したい」とか「自宅を一定期間のみ賃貸に出したい」といった家主の要望があっても実現ができず、何かと不便だったのです。
そこで、このような状況を解決するために平成12年3月1日、「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」の施行がされます。
それに伴い、正当事由がなくても契約更新を拒否できる定期借家制度が始まったわけです。
以下、定期借家契約と普通賃貸借契約の違いを項目ごとにまとめた表です。
定期借家契約 | 普通借家契約 | |
契約方式 | 書面のみ | 口頭でも書面でも契約可能 |
更新の有無 | ・原則無し・契約期間は通常2年
・契約期間を1年未満とした場合には、期間の定めのない契約となる |
貸主に正当事由がない限り更新 |
賃貸借機関の上限 | 制限なし |
・2000年3月1日以前の契約は20年まで
・2000年3月1日以降の契約は制限なし |
賃料の増減額 | ・原則不可
・特約がある場合その定めに従う |
請求可能 |
1年未満の契約の効力 | 1年未満の契約も可能 | 期間の定めのない契約となる |
借主からの中途解約 | ・原則不可
・床面積が200㎡未満の住居用物件に限り借主側にやむを得ない事情がある場合には、申し入れ可能 ・中途解約に関する特約があれば、その定めに従う |
期間の定めがなければいつでも可能 |
なかでも注目すべきは定期借家契約では、途中解除が認められていない点。契約期間中に解約する場合、違約金を支払う必要な場合があるというます。
ただし、
・床面積が200平米未満
・居住用建物
・転勤・療養・親族の介護などのやむをえない事情がある場合
の3点全てを満たした場合は、中途解約可能です。
まとめると、
・契約解除が難しい普通借家契約は、概ね借主に有利な形態
・退去が前提の定期借家契約は概ね貸主に有利な形態
となります。
両者の違いを把握していないと
「せっかくお金をかけて内装をつくったのに、解体しなければならない」
とか、
「常連客がついてきたところなのに、閉店しなければならない」
といった事態が起きかねません。
借主、貸主視点で見た場合のメリット・デメリット
以上を基に、それぞれの特徴を貸主、借主双方の視点から考察していきます。
貸主からすると…
まずは貸主視点で考えてみましょう。
定期借家契約のメリット
定期借家契約が貸主にメリットになり得るのは、次のようなケースです。
・将来の用途が決まっている
将来の用途が決まっていて、契約期間の満了と共に退去してもらいたい場合、定期借家契約がおススメと言えます。
例えば、
一時的に家を空けるがその後自分で利用したい
将来的な取り壊しを検討している
転売を想定している
など、シチュエーションは様々ですが、「そのままにしておくのはもったいないので賃貸に出したいが、期限を決めたい」といったケースにおいて、必ず退去してもらえる定期借家が有用でしょう。
・再契約を前提としている場合
定期借家にも「再契約を前提としたもの」があり、近年、増加しています。
要はあらかじめ決めた期間の中で、入居者の質を見定め、問題がなければ契約を更新し、問題があれば退去してもらうわけです。
これにより、悪質な借主の長期入居を回避できます。
ただし看過できないデメリットも
けれども、定期借家契約がオーナー様にとって必ずしも有利とは断言できません。
・収益を最大化できない
まず、定期借家は契約満了で解約が可能となる反面、通常賃料が1割程度は安くなってしまいます。
・6か月前予告の手間がかかる
定期借家では、契約期間が満了する6か月前に期間満了により契約が終了する旨を通知し、再契約を行う場合は再度の手続きを行う流れになります。
他方、普通借家では1か月前の通知が一般的です。つまり早期の決断を迫られる定期借家は入居者にとっても貸主にとっても自由度が低いわけです。
・空室リスクがついてまわる
定期借家は契約満了での退去を前提としているため、都度空室リスクが発生します。
・退去の度に原状回復費が発生する
加えて退去の度に原状回復工事をしなければならず、オーナー様に大きな負担を強いることになります。
こうした理由から、長くお住まい頂くことがオーナー様の利益になるという考えで、WOOCでは基本的に定期借家契約は取り扱っていません。
借主からすると…
では、借主視点からするとどうでしょうか。
基本的には普通賃貸借契約が吉
借主側としては「出来るだけ長く入居したいけれど、自分のタイミングで解約したい」と考えるのが一般的でしょう。その場合は、普通賃貸借契約にメリットがあると言えます。
基本的に更新可能で、貸主が更新を拒否する場合には正当事由が必要なため、余程のことがない限り退去を迫られる事態にはならないわけですから。
定期借家契約がメリットになることも
とは言え、定期借家契約がメリットとなるケースもあります。
・高級住宅に住みたいが、長期間契約できるほど経済的に余裕がない
例えば、お金がないけれど高級住宅に住みたい場合。
定期借家契約では更新と中途解約ができないので、人気がありません。そのため家賃が周辺相場と比べ大幅に安い物件も存在します。
つまり、低費用で高級な物件に住める可能性があるのです。
・持ち家のリフォームや立て直しなどの際、仮住まいにしたい
また自宅を別に持っているものの、建て直しや改築を予定している場合の仮住まいとしてもピッタリです。
一部屋だけなど小規模の改装ならば、多少の支障はあれど家で暮らすことはできます。しかしTV番組で紹介されるような大規模なリフォームの場合、家で寝食はできません。
しかもリフォームが完了するまでに、数か月を要するケースもあります。そうした場合に定期借家はもってこいと言えましょう。
・一定期間のみ居住したい
そして退去することがあらかじめわかっている場合も、定期借家契約がおススメです。
例えば、4年後に退去することが分かっている大学生が下宿先に利用する場合や、単身赴任の勤め人が単身赴任期間の住まいとして利用する場合にも適しています。
トラブルを防ぐためにも違いをおさえておこう
「普通賃貸借契約と定期借家契約の違い、何となくわかったけどややこしい!」と感じた方もいるかもしれませんね。しかし、それぞれの特徴をしっかり把握し入居者に伝えることが大切です。そうすることで、無用なトラブルも予防できます。