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VOL.35

連帯保証人の代わりになる家賃保証会社。利用のデメリットとは

2019年5月22日|
連帯保証人の代わりになる家賃保証会社。利用のデメリットとは

近年急激に増加しているのが、家賃滞納が発生した際、貸主に立替え払いをしてくれる「家賃保証会社」です。一見すると滞納リスクを回避でき、貸主にはメリットしかないように思えますが、実は利用には注意が必要です。
そこで当記事では家賃保証会社を利用するデメリットを貸主視点で解説していきます。

◆家賃保証会社とは

そもそも、家賃保証会社とはどういったものなのでしょうか。まずは簡単におさらいしておきましょう。

≪家賃保証会社とは≫

通常、物件を借りるには連帯保証人が必要です。しかし例えば親族が年金暮らしで保証人になれない、外国籍で親族が日本にいないなどの理由で連帯保証人が立てられないケースがあります。そこで家賃保証会社の出番です。

家賃保証会社の主な役割は、借主が家賃を延滞した場合に貸主に対して立替え払い(代位弁済)をすることです。近年急激にその需要を伸ばしている家賃保証会社ですが、背景には核家族化や少子高齢化の進行があります。つまり、昔は親族などに連帯保証人を依頼するのが一般的だったのが、近年では親族関係が希薄化したことで、連帯保証を頼みにくくなってきたわけです。

そして家賃保証会社は代位弁済以外の役割も担っています。例えば次のようなものです。

・賃料回収代行
貸主の代わりに毎月の家賃を借主から回収します。

・訴訟費用負担
家賃不払いなどのトラブルが訴訟に発展した場合、訴訟費用を負担します。

・原状回復費用負担
借主の退去後は、次の入居者に貸出できるように、内装を修復したりクリーニングしなければなりません。この原状回復にかかる費用を負担します。

借主のメリットしては、連帯保証人が不要な点以外に、例えば「本人の与信力が低くても入居者審査に通りやすい」点が挙げられます。入居審査では、本人属性(収入や職業など)を見られますが、正規雇用でない場合など入居者本人の信用力が低い場合、落とされることも少なくありません。滞納リスクが高いと判断されるからです。その点家賃保証会社を利用すれば、滞納リスクが低減するので入居審査に通りやすくなります。

加えて「場合によっては初期費用が抑えられる」点も、借主側のメリットに数えられるでしょう。と言うのも物件によっては、家賃保証会社への加入を条件に敷金が減額されるのです。引越しの際は何かと物入りなので、借主としては助かりますよね。

◆家賃保証会社のデメリットとは

このように、貸主、借主間のトラブルを防ぐ意味では大家にとって家賃保証会社を利用することはメリットになると言えるでしょう。しかしその半面、デメリットもあります。

金銭債務以外は補償されない

まず大前提として押さえておかなければならないのが、家賃保証会社が保証してくれるのは金銭債務のみである点。賃貸物件では騒音、振動、悪臭トラブル、ゴミ出しなどのマナー問題など様々なトラブルが起こり得ます。

例えばアパート内で騒音トラブルが発生したとしましょう。いくら本人に注意しても改善されない場合でも、連帯保証人がたっていればその人を通じて本人へ注意することができます。連帯保証人は“連帯”して責任を負う人だからです。管理会社やサブリース会社へ委託している場合は問題ありませんが、オーナー様が自主管理をしている場合は、オーナー様の負担は大きくなります。

そして金銭債務の保証範囲についても、家賃保証会社によって異なります。家賃や共益費、管理費はどこの会社も保証範囲ですが、原状回復費用や更新料、明渡訴訟費用などは会社によっては保証対象外の場合もあるので注意が必要です。

借主との円滑な関係が築けないことも

家賃保証会社にとって、賃料の未回収はまさに死活問題です。そのため取り立ては時に「闇金より怖い」と言われるほど厳しいものになることがあります。結果として借主との関係が悪くなり、トラブルに発展するケースも少なくありません。

早期退去を招くリスクがある

家賃保証会社は、滞納発生時の対処が機械的かつ迅速です。一見するとこれはオーナー様にはメリットになるように思えますが、借主にとっては心理的負担になり得、早期退去を招くリスクがあります。

通常の賃貸契約では、仮に滞納が発生しても、借主の言い分を聞き柔軟に対応するケースも多いです。例えば、「急な出費があったため2週間待ってほしい」、「給料が下がったので分割払いにしてほしい」といった要望があった場合、貸主が応じる余地があるわけです。

しかし家賃保証会社の場合、こうしたコミュニケーションがとられることはほとんどなく、スピーディーに家賃回収を行うことになります。家賃の支払いが確認できないと、何度も借主に連絡を入れ、督促します。

こうなると、借主としても当然気分が悪いですよね。一度や二度滞納しても、借主は「客」なわけですから。その居心地の悪さが不満となり、早期退去に繋がり得るわけです。

自力救済によるトラブルも

早期退去くらいなら、まだマシです。保証会社があまりに強引な取り立てをした場合、取り返しのつかない事態に発展するかもしれないのです。と言うのも家賃保証会社はなかなか家賃を回収できないと、実力行使で強引に取り立てる(自力救済)ことがあります。

例えばなんとしても家賃を支払わせるために、深夜早朝の督促訪問や親族や同僚などへの借金強要、鍵の強制交換などが行われます。こうした行き過ぎた取り立てはもちろん違法ですから、訴訟にでもなれば勝ち目はないでしょう。万が一勝訴しても噂はあっという間に広まり、借主がつかなくなるかもしれません。

ある程度の規模の会社であれば大丈夫ですが、こうしたトラブルは数多く報告されていて社会問題にもなっているので注意が必要です。家賃保証会社の内容をしっかりと見極め、選ぶことがますます重要となっています。

入居審査を保証会社に委ねてしまいがち

また、保証会社の審査が通れば、入居審査OKと判断してしまうという面もあります。「これのどこがデメリットなの?」と思われるかもしれません。しかし審査を保証会社任せにすることは、直接的な審査を放棄することであり、貸主にデメリットになります。

人を見る目が育たない

まず、審査を保証会社の結果に依存することで入居者審査が通り一遍のものになってしまいます。しっかり審査する意識が低下すると、オーナー様の人を見る目が養われません。大事な物件にふさわしい借主を見極める力が育たないとなれば、オーナー様にとっては大きなマイナスと言えるでしょう。

質の悪い借主が入居することも

加えて、質の悪い入居者が増えることもあり得ます。

なぜなら家賃保証会社の審査に通っても、きちんとした借主とは限らないからです。家賃保証会社は、滞納歴や支払い能力が審査のほとんどのウェイトを占めます。例えば、経済力はあってもマナーは悪い借主が審査に通るケースは十分考えられますよね。夜中に騒ぐような借主であれば他の入居者は迷惑ですし、物使いが荒い人の場合、設備の破損や故障を起こしかねません。そうなれば、他の入居者がたまらず退去してしまうかもしれませんし、設備の修理だって必要になります。

実際に、問題のある借主を入居させてしまい、トラブルになる事例は多いです。

家賃保証会社が倒産することもある

そして家賃を保証するはずの家賃保証会社が倒産するリスクもあります。家賃保証のビジネスモデルは誕生してからまだ間もなく、法規制が整っていません。そのため家賃保証会社は省庁への届け出や、自治体の許認可を得ることなしに事業運営出来るのです。つまり、経営基盤が安定していないような会社や審査が甘い会社審査でも営業可能ということになります。

そのような会社は倒産リスクも高まります。

◆民法改正に伴い家賃保証会社はますます重要に

家賃保証会社の利用は、一見すると貸主にとってメリットばかりに思えます。反面今回紹介したように、実際にはデメリットも少なくないのです。

しかし、2020年4月に施工される改正民法では、極度額の定めが必須となり、借主死去によって連帯保証契約が終了するなど、個人連帯保証について大きな改正が行われます。
保証範囲が限定されるというオーナー様に対するデメリットもある上に、限度額を明記することにより、連帯保証人のなり手が更に減るのではないかと言われています。

オーナー様においては、上記のデメリットも踏まえた上で、貸主として漫然と「保証会社に加入しているから大丈夫」ではなく、しっかりとした保証会社や管理会社を選ぶこと、金銭面以外の入居者の質を確認すること、死亡時の原状回復費用に対応した保険等商品を検討することなどの対応が必要です。

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