国宝と法隆寺 - トラス構造と日本の伝統美 -

残暑が続く中いかがお過ごしでしょうか。
私事ですが、今夏は映画『国宝』を観てとても感動しました。
日本のマスコミほどダメなものはない…という痛烈な風刺と
日本の伝統芸能の神髄といえるものが表現されていたかと思います。
さておき「様式美」という言葉がございますが、
日本は美しいものを表現することに長けた文化が根付いているように思います。
建築においても様々な技法で。
綺麗に見え、壊れにくい構造というものを
古くから追求しているのではないでしょうか。
私が建物の『国宝』として真っ先に浮かぶのは
世界最古の木造建造物である奈良の「法隆寺」です。
木組みにより無駄のない骨組みをしたフォルムの美しさ、
また、構造計算という概念がないであろう時代に造られたものが
台風、地震と災害の多い中1400年以上もそのまま建っているという部分に、
古来よりの知恵と技術、そして民族的執念を感じられます。
法隆寺に使われている「トラス構造」
は強度があり、木という素材的にも相性が良く、見栄えも美しい、
という超合理的な造りをしています。
近年では新国立競技場の軒庇が同様の構造で造られており、
印象的な意匠なので、「あ~、あれのことか」と
イメージが浮かぶ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日本らしい建物(構造物)の象徴として文化を繋いで建てられていると思うと
なんか「エモい」ですよね。
日々四季を感じづらい気候に変化してきておりますが、
日本人らしい文化的思考や価値観は残していける世界であって欲しいと願っています。